「5分だけ休もう」の後には、たいてい「そのほうがはかどるから」が続きます。私もこのテーマを調べ始めたときは、その因果を確かめることになるのだろうと思っていました。
ところが、実験を集めた資料ではっきり出ていたのは、はかどり方ではなく別のほうでした。
① ここでいう「短い休憩」は10分以内です
2022年のメタ分析がこのテーマを整理しています。過去30年に出た実験・準実験19件から22の標本、参加者2,335人を集めた資料です。
短い休憩、いわゆるマイクロブレイクは「10分を超えない業務の中断」と定義されました。コーヒーを取りに行く、窓の外を見る、少し体を伸ばす、その程度です。
測ったのは3つです。活力、疲労、そして成績です。
② はっきり変わったのは「疲れにくさ」でした
3つのうち結果がいちばん明瞭だったのは疲労でした。短い休憩を取った側のほうが疲れていませんでした。
論文の数字は0.35ですが、この値だけでは感覚がつかめません。両群の値が釣鐘型に散らばっているとみて換算すると、こういう意味になります。
▸ 休んだ人と休まなかった人を無作為に1人ずつ選んで比べると、休んだ側のほうが疲れていないのは10回のうち6回です。
▸ 2つの条件にまったく差がなければ、この値は10回のうち5回になります。
活力もほぼ同じで、10回のうち6回でした。ただし活力のほうは、今後の研究で効果が出ない可能性まで推定の範囲にかかっていて、疲労ほど堅くはありません。
③ 目を引いたのは大きさより「ぶれなかった」ほうでした
この22の標本は8か国から出ています。対象も事務職、看護師、コールセンターの相談員、学生と分かれます。
休んでいる間にしたことも様々でした。体を動かした研究、別の認知課題を与えた研究、自然の風景を見せた研究、ただ弛緩させた研究が混ざっていて、休憩の長さも3分から10分までありました。
これだけ違う研究なのに、疲労については結果が散らばりませんでした。研究間のばらつきは0%で、今後似た研究を行っても結果は同じ方向にとどまると推定されています。
効果量0.35は、慣例上は「小さい」に分類される値です。ただし小さいという判定はいつも何と比べるかの問題で、ここで支払う代価は5分です。
そしてこの効果は条件をほとんど選びませんでした。休憩の長さも、学生か社会人かも、実験室か実際のオフィスかも、結果を変えませんでした。
④ 一方、はかどり方は話が違いました
成績は15の標本を集めても統計的に有意ではありませんでした。同じやり方で換算すると10回のうち5.5回ほどで、これは偶然と区別がつかない範囲です。
ここで「短い休憩ははかどり方を上げない」と書きたくなるのですが、同じ論文の次の段落を見るとそうは書けません。
著者らが出版バイアスを点検したところ、兆候が出たのは成績のほうだけでした。効果がなかった研究は発表されにくかった可能性です。それを補正した値は、むしろ統計的に有意になりました。
ですから、はかどり方について言えるのは「効果がない」ではなく「疲労ほどはっきりは出ない」です。
⑤ 特に頭を絞った後には出にくいものでした
成績が分かれた点がもう一つあります。休憩の直前に何をしていたかで結果が違いました。
▸ 認知的な負担が大きい仕事の後 — 効果は出ませんでした(9標本)
▸ 創造的な仕事の後 — 有意な改善がありました(3標本)
▸ 単純な事務作業の後 — いちばん大きい結果でした(2標本しかなく、著者らも慎重に読むよう記しています)
また休憩が長いほど成績側の効果が大きくなる傾向がありました。著者らは結論で、認知的に消耗の大きい仕事から回復するには10分を超える休憩が必要かもしれないと述べています。
長く頭を使った後に5分休んだだけで調子が戻ることを期待するのは、この資料が支える期待ではありません。その5分が疲労を和らげることとは別の話です。
⑥ では休んでいる間に何をすればいいのか
この問いには、著者ら自身が答えられなかったと明記しています。含まれた研究が少なく、休憩中に何をしたかで分けて分析できなかった、そしてそれが実務上もっとも重要な問いなのに扱えなかった、と書いています。
ただし気分と疲労に関しては答えが見えているとも付け加えています。仕事から離れる活動でありさえすれば、種類は問わないようだ、ということです。
先に見たとおり、体を動かしても、外を眺めても、ただぼんやりしていても、疲労側の結果は散らばりませんでした。
⑦ それで今、休もうか迷っているなら
▸ 休むと仕事がたまると思って休めていないなら — この資料に、休まないほうが成績で勝るという根拠はありません。代わりに、休んだ側のほうが疲れていないことは8か国22標本で同じ方向に出ています。
▸ 休んでも調子が戻らないと感じるなら — 直前の仕事が頭をよく使う種類だったなら、それは5分の休憩に期待できるものではありませんでした。はかどり方ではなく疲労のほうへ期待を移すのが資料に合っています。
▸ 何をして休むか迷うなら — 種類はあまり関係ありませんでした。仕事から離れさえすれば足ります。
問いを変えると少し簡単になります。「休めばはかどるか」ではなく「今どれくらい疲れているか」です。前者にこの資料はぼんやりとしか答えませんが、後者にはかなりはっきり答えます。
どれくらいの間隔で区切るのがいいかは、以前に別途まとめています。
→
barosit.com/community/p/e3a7c1d9-4f80-4b56-92dc-8e4f3a9b6c05
BaroSitがしているのはまさにこの部分です。同じ姿勢が長く続いていたら知らせる、その程度で、その時間に何をするかはこの記事が示したとおり決まった答えがありません。
正直に付け加えると、画面の通知そのものの効果も大きくはありません。事務職を対象にした無作為化試験18件・1,164人を集めた2025年の分析で、コンピュータ通知は座っている時間を1日12分ほど減らしましたが、業務の指標や筋骨格・代謝の指標は有意に変わりませんでした。
→ 気になる方は
barosit.com をご覧ください。
座っている時間と動きについての根拠は
barosit.com/science にまとめてあります。
出典
• Albulescu, Macsinga, Rusu, Sulea, Bodnaru & Tulbure, 2022 · PLoS One 17(8):e0272460 — 実験・準実験19件から22標本、参加者2,335人。短い休憩は10分以内と定義。活力0.36(95%信頼区間0.16〜0.55)・疲労0.35(0.19〜0.50)は有意、成績0.16(−0.04〜0.37)は有意でない。疲労は研究間の異質性0%、予測区間0.16〜0.53。成績は出版バイアスの検定が有意で、補正値は0.22(0.02〜0.43)。直前の課題別の成績は認知−0.09(−0.39〜0.20、9標本)・創造0.38(0.11〜0.64、3標本)・事務0.56(0.01〜1.12、2標本)。活力と疲労では、休憩の長さ・対象・実施場所のいずれも有意な調整変数ではなかった。著者らは休憩中の活動の種類を分析できなかったと明記。本文の「10回のうち何回」は、この効果量を共通言語効果量に換算した値
• Leppe-Zamora, Ramos-Fuster, Muñoz-Monari, Roa-Alcaino & Sarmiento, 2025 · Int J Behav Nutr Phys Act 22(1):75 — 事務職を対象とした無作為化試験18件・1,164人。コンピュータ通知ソフトが勤務日の座位時間を12.46分短縮(95%信頼区間−18.12〜−6.80)、歩数を1,030歩増加。業務・筋骨格・心血管代謝の指標は通知側に有利だったが統計的に有意ではない。エビデンスの確実性は低〜中
この記事が扱った資料は勤務中の短い休憩についてのもので、活力と疲労はいずれも参加者本人が報告した値です。また含まれた研究はすべて新型コロナ以前の文献です。
本記事は一般的な情報であり、医学的助言ではありません。休んでも回復しない疲労が数週間続く場合や、体重の変化・息切れなどの症状を伴う場合は医療機関を受診してください。